「財務省文書改ざん不起訴」「甘利明・収賄不起訴」「石川知裕・虚偽記載逮捕」 これら「どこからどう見てもおかしい」事件の裏に「官邸のヒムラー」あり 三権分立「検察の政治からの独立」を破壊した男、黒川弘務の黒い履歴書
6月22日。森友問題をめぐる野党合同ヒアリング。弁護士でもある福島瑞穂議員が怒り狂っていた。
「日本に三権分立があるのか!? 官邸は検察の捜査もまったく怖くない。配下に置いている。官邸が法務省を通じて検察に圧力をかけているということじゃないですか」
辰巳幸太郎議員が入手した国交省の内部文書に次の記載があった。
<調査報告書をいつ出すかは、刑事処分がいつになるかに依存している。官邸も早くということで、法務省に何度も巻きを入れているが、刑事処分が5/25
夜という話はなくなりそうで、翌週と思われる>
首相官邸が法務省に巻きを入れる?
「今回の不起訴処分は、官邸が法務省に圧力をかけて、検察が不起訴処分にしたということを裏づける中味になってるんですよ。これはもう凄いことで、日本に検察って何、政治手続きって何、というところを、権力・官邸の意のままに作ることができるんだったら、何を信じて法の支配があるんですか、っていうくらい、もの凄いことなんですよ」
「法務省って誰のことですか? 事務次官ですか、誰ですか?」
福島議員が指摘した男の名は、黒川弘務。2011年8月に法務官房長に就任し、政権をまたいで5年間も「分立」しているはずの行政と立法と司法を調整してきた男だ。
「籠池をすぐに逮捕せよ」と指示したといわれる黒川弘務
2012年12月16日。不正選挙。
再び総理の椅子に座った安倍晋三は独裁に向かって突っ走った。その手始めが、官僚の人事を官邸が意のままに操ることだった。
2014年5月。内閣人事局が発足。
それでも福島議員をはじめとする法律家は、安倍晋三を甘く見ていた。
1970年代以降、半世紀にわたって、政治家が検察の人事に口を出したことは一度もなかったからだ。
「官邸と検察の間には強固な結界が存在する」とたかをくくってきた。
2016年7月中旬。結界は音を立てて崩れ落ちた。
ジャーナリスト・村山治の取材によれば、
<「官邸側の意思は硬く、稲田氏の説得が受け入れられる状況ではなかった。稲田氏は真っ青になって帰った」>(朝日新聞デジタル 2016年11月12日)
この日、稲田伸夫・法務事務次官は、人事案を手に首相官邸に入った。
法務省の原案では、稲田自身の後任の事務次官に林真琴・刑事局長を据えるはずだった。
しかし、菅義偉・官房長官が強硬に反対し、法務省原案を蹴った。
官邸が無理やり法務事務次官に椅子に座らせたのが「官邸の守護神」「日本のヒムラー」とも呼ばれる黒川弘務だった。
なぜ、林真琴は菅によって切られたのか?
1年後に謎はあっさりと解ける。
2016年5月。安倍晋三の公約「リニア新幹線」に反対する訴訟が起こされた。
このときはまだ「環境問題」「住民への説明不足」などの問題だったのだが、検察は「談合事件」として捜査を開始していた。
2017年12月18日。東京地検特捜部が、鹿島、清水建設を家宅捜索した。
「東京地検特捜部が強制捜査に乗り出したんだから、狙いは議員バッジをつけた人間だ」
「土建屋系」国会議員は震え上がった。
この強制捜査を指揮していたのが、林真琴・刑事局長だったのだ。
そのわずか8日後の12月26日。安倍晋三は、三権分立を完膚なきまでに叩き潰す暴挙に出る。この日、閣議決定されたのは以下の一件のみだった。
<林真琴・刑事局長の名古屋高検検事長への異動を閣議決定する。>
「リニア談合」問題は、新聞、テレビ、ネットから消えた。
黒川弘務の「黒い履歴書」は、26年も前から始まっている。
2002年4月22日。大阪高検公安部長だった三井環が、自宅を出たところで逮捕された。
罪状は「未入居の住宅に住民票を移動した」という「手続きのためにみんなやってるんじゃないの?」と誰もが思う微罪だった。
この日、三井環は『ザ・スクープ』(テレ朝系)の取材で、鳥越俊太郎のインタビューを受けるはずだった。
「住民票を入居前に移した」身内の人間を逮捕。
「安倍晋三の国会答弁に合わせ、公文書を改ざんした」財務省「悪のグループ」からは逮捕者はひとりも出ていない。
(つづく)
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