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2016年12月31日 (土)

東芝巨額損失の真相 ストーン・アンド・ウェブスター社は「マンハッタン計画」秘密施設を建設し、広島、長崎のひとりの命を2612万円の札束に変えた

東芝が買収した「ストーン・アンド・ウェブスター」は

広島・長崎にいたひとりの命を2612万円の札束に変えた

 

 身の毛がよだつような相手でも、ヨーロッパでは敵は人間だった。しかし、太平洋戦線では、日本人がまるでゴキブリかネズミのように見られていることがわかった。

 従軍記者 アーニー・パイル 1945年2月

 

 思慮分別のないジャップは、人間らしさを示すものが何ひとつない。

 米国の雑誌『タイム』

 

 2016年1月5日。東芝は「CB&Iストーン・アンド・ウェブスター社の買収が完了した」と発表した。

 東芝は、子会社ウェスチングハウス(WEC)の新型原発「AP1000」を建設する会社を買った。株式100%取得。買収金額は非公開だが、ブルームバーグの報道によれば、2億2900万ドル。約270億円。

<現時点では、WECグループ及び当社連結ベースで約87百万米ドル相当(約105億円)ののれんの計上を想定しています。>(東芝プレスリリース)

 ……105億円の「のれん」?

<のれんとは、買収で支払った金額のうち、買収先の純資産を上回った額をさします。買収先の持つブランド力など見えない資産価値を表しています。>(日本経済新聞の用語解説)

 東芝はこの会社の「ブランド力」が105億円だと主張している。

「ストーン・アンド・ウェブスター」というブランド名を聞いたことありますか?

 日本経済新聞は読者に問いかける。

不衛生な途上国の露店で2種類の缶ジュースが売られています。1つは米コカ・コーラ社製、1つは未表示でメーカー名が書かれていません。同じ値段ならどちらを買いますか?>

 コカ・コーラ社製を選ばせる力が「ブランド力」というわけだ。

「のれん」は東芝の「資産」として計上される。つまり、東芝は、買収により270億円の現金を失ったが、105億円相当の「ブランド力」を手に入れて、結果としては得をした、というわけ。

 この数字の根拠について日本経済新聞はこう解説する。

<コカ・コーラのジュース1ドルのうち、何セントがブランド価値ですかと問われても答えられません。金額で表せない見えざる資産だからです。

><しかし、見えない価値が見えるときがあります。買収時です。><相手方の純資産が200億円にもかかわらず、400億円で買収したとしましょう。なぜ200億円も上積みしたのでしょう。それは広い知名度や質の高い社員、技術力などを評価したからです。会計上の価値と実際の価値の差=200億円がのれんになり、バランスシートでは資産の部にのれんを計上します。>

 これが「会計のルール」であれば、ストーン・アンド・ウェブスターの純資産は(270億-105億=)165億円ということになるのだが……。

 この見たことも聞いたこともない会社の純資産について、同じ日本経済新聞がこう書いている。

<同社は米国で進行中の2つのプロジェクトに関連し損失引当金を多めに積んでおり、現時点では債務超過となっている。>(電子版 1月5日)

 悪い冗談?……てゆーか、これは犯罪だ。

 純資産ゼロ!

「債務超過」つまり「破産した会社」を東芝は買った。

 いや、「買った」という表現は正確ではない。

 米国で原発建設を続けるために、東芝はストーン・アンド・ウェブスターを「買わざるを得ない」ところまで追い詰められた。

<2つのプロジェクト>のうちのひとつ、サウスカロライナ州VCサマー原発を所有する電力会社「スキャナ」は、州の規制当局に次のような報告をしている。

<原発増設の鍵となる部材の入荷が予定より2年超遅れている。>

<このため増設プロジェクトの完成が3年も遅れ、2020年になる>(ウォールストリート・ジャーナル 2015年3月6日)

 東芝が隠していたWECの減損の理由は「工事遅延」「コスト超過」だった。

 WECと東芝を大損させた会社を東芝は「買わされた」のだ。

 ストーン・アンド・ウェブスターの「ブランド力」って何!?

<CB&Iがウェスチングハウス(WH)の設計した原子炉用に使っている建設方式は、このプロジェクトの売り物だった。それぞれの原子炉の大規模構造部分を別の場所で構築し、最後にそれを原子炉建屋に運んで最終的な組み立てを行うというものだ。><この新技術は、30年前に原発産業の拡大を妨げた遅延とコスト超過を解消する切り札とたたえられてきた。

「たたえられてきた」という表現も正確ではない。ストーン・アンド・ウェブスターは「工事遅延はない」と一方的に宣伝し、その約束を守れなかった。

 この会社の「ブランド力」は「真っ赤なウソを並べること」つまり「詐欺」だった!

<しかし、別の場所での組み立ては予想されていたより難しいことが分かった、とCB&I電力部門のジェフ・リアッシュ社長は昨秋のインタビューで述べている。>

 CB&I(シカゴ・ブリッジ・アンド・アイアン 本社オランダ)がストーン・アンド・ウェブスターを傘下に収めたのは2012年7月。

<今回の売却によりCB&Iは大規模な原子力プロジェクトから撤退することになり>(ブルームバーグ 2015年10月28日)

 巨大ゼネコンが東芝に「さようなら」。

<同社とWHが電力会社サザンやスキャナとの間で係争してきたプロジェクトのコスト超過分負担問題の解決につながる。>

 ストーン・アンド・ウェブスターが証明したことはただひとつ。

「原発を造ると損をする」

 

 ストーン・アンド・ウェブスターに「のれん」などない。

<ストーン・アンド・ウェブスターは、インドネシアのスハルト大統領への贈収賄事件を引き起こし、2000年に崩壊した。>(ウィキペディア)

 なんと、2000年に破産申告をした札つきのブラック企業だった!

 今回の「コスト超過事件」は2度目の破産だったのだ。

「この会社には105億円のブランド力がある」という東芝の主張を真に受けるやつがどこにいる!? いたとしたら、相当なバカ、ウスノロだ!

 

 もうひとつ。ストーン・アンド・ウェブスターには、日本人が絶対に忘れてはならない過去がある。

「マンハッタン計画」の最高責任者、レスリー・R・グローブスが書いた『私が原爆計画を指揮した』(恒文社)という本を読んでみてほしい。

<こうした条件からみて、私は最適の候補地はテネシー州のノックスビルに近いところであるという結論に達した。マーシャル大佐が私の見解に同意したので、彼とニコルズ中佐は部下やストーン・アンド・ウェブスター社およびテネシー川流域開発工事管理局の代表者とともにノックスビル一帯の現地調査をはじめた。>(14ページ)

 最初に登場する企業名がストーン・アンド・ウェブスターなのだ。

<それから数日後、シカゴ治金研究所で会議が開かれた。コンプトン博士はウラン酸化物の不足を心配していたので、ストーン・アンド・ウェブスター社はこれを早急に購入するよう手配した。>

 実際にウランを運んできた会社はどこだったのか?

<……ウェスチングハウスが、マンハッタン計画の正式スタートから三ヶ月後、早くも三トンという大量の純粋ウランを本部に届けた。>(広瀬隆『東京が壊滅する日』ダイヤモンド社)

 ストーン・アンド・ウェブスターとWECが調達したウランが、ノックスビルから広島に運ばれ爆発した。

 1945年。原爆投下により広島では「この年だけで」14万人が死亡した。

 WECとストーン・アンド・ウェブスター。70年前の悪魔の同盟が、2016年1月に東京芝浦で再び合体したのである。

 ストーン・アンド・ウェブスターは「マンハッタン計画」のほぼすべての施設を建設した。

 以下、この会社が「殺人を札束に変える」ビジネスモデルを解説しよう。

「マンハッタン計画」最高責任者、グローブスによれば、オークリッジ「Y―11」ウラン分離・濃縮工場の建設費は1200万~1700万ドルと見積もられていたが、すぐに3500万ドルに増やされ、最終的には3億400万ドルに膨れ上がった。米国国家予算比較で現在の価値に換算すると約1兆2240億円!

 予算総額は5億4400万ドルで(運転費2億400万ドルなど)、建設費は予算総額の55・89%を占めている。

「マンハッタン計画」全体の予算は22億ドルで、現在の価値に換算すると約10兆円!!

 グローブスの著書が正確なら、原爆工場を建設したストーン・アンド・ウェブスターは、約5兆5890億円を得た計算になるのだ。

 賢明な読者なら、次の事実を承認してくれるはず。

「日本は原爆投下の数ヶ月前から戦争終結を模索していた」

「原爆を投下されなくても日本は降伏していた」

 原爆投下による死者は、「その年だけで」広島14万人、長崎7万4000人。計21万4000人。

 ストーン・アンド・ウェブスターが得た金額を21万4000で割ると……。

 この会社は、日本人ひとりの命を2611万6822円の札束と小銭に変えた計算になるのである。

 1千万円の札束は「レンガ」と呼ばれるが、煉瓦2つ半。

 広島・長崎で死んでいった人たちは「炎を上げる炭」と表現された。銀行の前で「単なる影」となり消滅した人もいた。

 

<ウェスチングハウスの研究所に帰る決心をしました。>

<ここ(「マンハッタン計画」ロスアラモス研究所)にいれば、ウェスチングハウスにいるよりも、より戦争に役立っている、という強い確信を持つことはできませんでした。>

 コンドン博士のオッペンハイマーへの手紙。

 

「私はあなたたち日本人を傷つけてしまった」

 アルバート・アインシュタインが湯川秀樹に初めてかけた言葉。

 

<「米国による原子爆弾の開発は必要であったのか?」という質問に対する答えとして、私は率直に「必要であった」と答える。「原子力というものは善の力か悪の力か?」との質問に対しては、私はただ「人類が欲するとおり」と答えることができるだけである。>

レスリー・R・グローブス『私が原爆計画を指揮した』

 

「私の名は死」

“原爆の父”ロバート・オッペンハイマー

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 以上、2016年1月11日 メルマガ記事再掲

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