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2016年7月14日 (木)

宇都宮健児「選挙供託金」裁判に集まろう!米国、フランスは供託金ゼロ 英国は約8万円 日本の民主主義は「貧しい若者の代表立ち入り禁止」?

 
  およそ民主国家とは思えない最悪の選挙制度
 
「観客民主主義」の「客席」に座ることすらできない日本の若者
 
 
 1920年代。「民主国家プロパガンダ」の生みの親であるジャーナリス ト、ウォルター・リップマンは「主権者を客席に追いやれ」と主張した。
 
<正しく機能する民主主義社会には複数の市民階級が存在する。>(ノー ム・チョムスキー『メディア・コントロール』集英社新書)
 
<第一の市民階級は、総体的な問題の処理に積極的な役割を担わなければならない。これは専門知識を持つ特別階級である。政治、経済、イデオロ ギーのシステムにおける諸問題の分析、実行、意思決定、管理をするこれらの人びとは、人口のごく一部でしかない。>
 
<このグループから漏れた人びと、すなわち、人口の大部分を、リップマ ンは「とまどえる群れ」と称した。>
 
<われわれは「とまどえる群れの横暴や怒号」から身を守らなければならない。>
 
<民主主義社会における彼ら(引用者・註「とまどえる群れ」)の役割は、 リップマンの言葉を借りれば「観客」になることであって、行動に参加することではない。>
 
 日本の「観客民主主義」の完成形は、2005年の衆院選「小泉劇場」 だった。
 
 元NTTの宣伝マンだった世耕弘成を中心に自民党にプロパガンダ・チームが結成され、テレビ、新聞を徹底的に「モニタリング」した。通称「チーム世耕」は、影響力のあるブロガーを自民党本部に招待したりもした。 「刺客」や「くノ一」がでっち上げられた。
 
 世耕とPR会社は、セリフ、しぐさ、服装などを徹底的に指導した。「小泉劇場」の出演者は、「プロパガンダの自動人形」であり、選挙はプロレス と化した。
 
「選挙のプロ」も予想しなかった自民党の圧勝。
 
 人材育成コンサルタントの辛淑玉は、プロパガンダの正体を次のように喝破している。
 
<キーワードは「憎悪」だ。無党派層の多くは不況でもっとも打撃を受けている都市部の若者。高学歴にもかかわらず不安定な状況に置かれている 彼らの中にはバーチャルなナショナリズムに酔いしれ、ネット上でマイノ リティーを攻撃する者も少なくない。小泉さんは彼らの憎しみを、不況でも身分が保証された公務員に向けさせた。>(朝日新聞 2005年9月 12日夕刊)
 
「自民党をぶっ壊す」
 
「郵政民営化に反対する者はすべて抵抗勢力だ」
 
「抵抗勢力は公務員の特権を守ろうとしている」
 
 小泉節は、若者たちの憎悪と響き合い、彼らを投票所へと向かわせた。
 
<このように「大衆の攻撃性」を扇動するやり方は、一歩引いてみると稚拙な手法だが、それにだまされるほど社会は閉塞している。禁じ手を糾弾できずに沈黙し続けたメディアの罪は大きい。また、野党は無党派層の不満を吸収できなかった。  民主党は徹底的な弱者救済策を示さず、自民と公約に大差がないまま。 母体の労組がパートなど組織されていない労働者のケアを十分にしてこなかったつけが出た形だ。労組の罪も深い。>
 
「無党派層」「メディア」「労組」――。どれも「観客民主主義」を読み解 く上で重要なキーワードだが、つけ加えるべきは「財界」の存在だ。
 
 終戦直後、日本の労働組合の組織率は60%を超え、日本は「革命前夜」 の様相を呈していた。
 
 労組が支える「革新政党」に対抗すべく、経済団体連合会(経団連)は 自民党への献金システムを作り上げてゆく。
 
 各企業の政治献金をいったん預かって、金儲けに都合のいい政党に大金 を流す「経済再建懇談会」が設立されたのは1955年。保守政党が合同 し、自由民主党が結成されたのも1955年。
 
 財界が支える自民党は選挙で無敗。
 
 労組が支える社会党は万年野党。
 
「55年体制」とは、日本の政党にまだ「存在理由」があった幸福な時代 といえなくもない。
 
 今の読者には信じがたいことかもしれない。1960年代、「無党派層」 は国民の6%程度しかいなかった。
 
 しかし、「プレイヤー」である政治家をただ眺めているだけの「観客」に とって、これほど退屈なものはない。
 
 1970年代、「無党派層」は20%を超えた。 「無党派層」という言葉が盛んに宣伝され始めたのは1990年代中盤で ある。世論調査で国民の半数以上が「支持政党なし」と答え、既存政党の 存在理由がなくなってしまったからだ。 「企業ぐるみ」「労組ぐるみ」「役所ぐるみ」の選挙が結果に影響を与える 度合いはどんどん低下し、浮動票の行方によって権力が移動する。
 
 1989年の参院選では、消費税導入をめぐって、浮動票が社会党に集まり、土井たか子党首がこう豪語した。
 
「山が動いた」
 
 支配層にとって、放置しておけない事態が到来した。
 
 そして、選挙制度が改悪された。日本の選挙制度は民意をまったく反映 しない「壊れた鏡」になってしまった。
 
 竹下内閣を直撃したリクルート事件。自民党のドン、金丸信を失脚させた佐川急便事件……。その他いろいろ。
 
 1990年代初頭。わが国で「政治改革」の大合唱が起きた。
 
 問題は、誰が最もでかい声を出していたのか、ということである。
 
 1992年4月。「政治改革推進協議会」が誕生。共同代表に茂木友三郎「キッコーマン」会長がいた。副代表には、福川伸次「電通」顧問、池田守男「資生堂」会長と草野忠 義「連合」事務局長が仲良く並んでいる。顧問会議議長は、奥田碩「経団連」会長兼「トヨタ自動車」会長。
 
「新しい日本をつくる国民会議」と名を変えたこの団体について、主査をつとめた植草一秀は次のようにこき下ろしている。
 
「大資本と大資本系労組の代表のみで構成される“似非国民会議”だ」
 
「政治改革」の大合唱から「55年体制」の崩壊、細川護煕政権誕生へ― ―。最も積極的に動いたのは「松下政経塾」出身の政治家たちだった。
 
 文字通りの「労使一体」。この頃、労組の組織率は25%を切っていた。労組は瀕死状態になり、 「労使の対立」という構図はすでに幻想だった。
 
「政治改革」とはなんだったのか?
 
 市民が立ち上がって声を上げたのではない。財界が「金儲けに都合のいい」政権と選挙制度を作るための「政治改革」 騒ぎだったのだ。
 
 国民の99%を支配している「観客民主主義」は、1%の大金持ち、支配層によって仕組まれた。その証拠が、選挙制度「改正」に組み込まれた 「候補者届出政党」という名の「差別」政策だ。
 
「無党派層」が国民の半分以上になったら、どうすればいい?
 
 彼らの「不満」「怒り」「うんざり感」などを拾い上げる新しい政党、新しい政治家が求められているはずなのだ。
 
 しかし、「改正」された公職選挙法は、「新党」と「個人」を徹底的に差別して排除する。
 
<1994年のいわゆる「政治改革」時の公職選挙法「改正」によって、 国会議員5人以上を有するか直近の国政選挙で2%以上の得票を得たいわゆる「候補者届出政党」(公職選挙法86条)とそれ以外の候補者との間で 小選挙区における選挙運動に差別が導入され、個人の立候補者を不利に扱う法制が導入されました。これは、「政党本位」の選挙の実現との建前で導入されたのですが、選挙事務所の設置、自動車等の利用、文書図画の枚数、 新聞広告、演説会などすべての選挙運動において差別がなされています。 さらに重大なことには、「候補者届出政党」には認められている政見放送が、 個人の立候補者には認められていません(公職選挙法150条、151条 の5)。>(小松浩『ここがヘンだよ日本の選挙』学習の友社)
 
 さらに大問題なのが、「政党交付金」である。
 
「候補者届出政党」にだけ配られる「政党交付金」とは……。
 
 赤ん坊も含む国民全員の財布から250円を盗む。
 
 議席数に合わせて、既存政党だけにその金を配分する。
 
   これが巨大詐欺事件でなくて何が詐欺か?
 
「なぜ、自民党に私のお金のいってしまうの? 支持していないのに」
 
 そう言っても無駄……なのか?
 
「時の権力からお金をもらっている政党に、時の権力を変えることなどで きるのか?」
 
 当然の疑問だと私は思うが……。
 
 日本の「観客民主主義」が完成する2005年までの10年間。自民党 は1470億2100万円の政党交付金を受けた。
 
 民主党619億5000万円。
 
 社民党266億5400万円。
 
 公明党211億1800万円。
 
 こんな国家は、世界中さがしてもどこにもない。
 
 ドイツにも政党交付金はあるが日本の金額の約半分!
 
 フランスは約4分の1!
 
 イギリスはなんと100分の1以下!
 
 アメリカには政党交付金は存在せず、イタリアでは廃止されている。
 
 我が祖国の国民はこう言っていることになる。
 
「250円あげますから、存分にプロパガンダをやってください」
 
「小泉劇場」の猿芝居は、我々の血税によって仕組まれたのだ。
 
 それでもあなたはこう強弁できますか?
 
「インターネットが日本の政治を変える」
 
 年間100億円を超える金が自民党に流れ、世耕弘成らは影響力のあるブロガーや「ネット依存症患者」を金で雇っているのだ。
 
 太刀打ちできる、と考える方がおかしい、と私は思う。
 
 さらに大問題なのが「供託金」の存在だ。
 
「政治改革」の美名の下、日本の支配層は、選挙に大敗すると没収されて しまう供託金を大幅にアップした。
 
 大正14年。男子普通選挙に導入された供託金は2000円。
 
 それが、選挙法「改正」のたびに引き上げられ、1975年に100万 円。1982年に200万円。1992年には300万円にまで引き上げ られた。
 
「貧乏人は選挙に出るな!」ということだ。
 
 ところが、「政治改革」を叫ぶ小沢一郎、細川護煕、河野洋平らは、衆院 比例代表の供託金を600万円に倍増させた。 「新党は国会に入れさせない」  事実上の「立ち入り禁止」宣言だ。
 
 こんな国家は、世界中どこをさがしてもどこにもない。
 
 イギリスの供託金は約7万7千円。アメリカ、ドイツ、イタリアには供 託金は存在しない。フランスでは、わずか約2万円の供託金が国民の批判 を浴び、1996年にゼロとなっている。
 
  日本の憲法44条は、議員及び選挙人の資格は、「人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によって差別してはならない」と明 確に規定している。 完全な憲法違反、人権侵害である。
 
 1990年、衆院選における20代の若者の投票率は57・76%。し かし、1996年には36・42%に急落した。
 
 支配層が、低賃金にあえぐ若者の政治への立ち入りを禁止したのだから、 当然そうなるよなあ。
 
 今の選挙制度では、貧しい若者の代表は絶対に国政選挙には出馬できな い。それを承知で、小沢一郎、細川護煕、河野洋平らは若者の民意を大量虐殺したのである。
 
 1980年代初頭、30%前後あった労働組合の組織率は、21世紀に なって20%を切った。
 
 労組からも見放され、切り捨てられた若者たちが、ネット右翼に、さらには「ヘイトスピーカー」へと変貌していったのも、ある意味、当然の帰結だと私は思う。
 
 現在、40代以下の国民にとって、労組、過激派の旗が立ち並ぶ政府への抗議集会は、日の丸に囲まれた安倍晋三の演説会より以上に「異様な光景」に違いないのだ。
 
 団体の旗を禁止して批判を浴びた首都圏反原発連合の首相官邸前抗議は、多くの若者、女子高生まで巻き込み、数万人の大群衆となった。まさに「今」を象徴する出来事だった。
 
 首相官邸前でも熱心に活動していた政党はあった。世論調査では国民の過半数を超える「脱原発」派の受け皿となるのでは、と期待された「緑の党」は、供託金が高すぎるために衆院選への参加をあきらめるしかなかっ た。
 
 政治不信によって若者たちが「無党派層」になったのではない。
 
 若者たちは、政治によって政治から追放され、「無党派層」になることを 強制された。
 
  彼らは今、「観客民主主義」の「客席」に座ることすらできない。
 
(中田潤メルマガ「白戸次郎対マリリン・モンロー」2014年3月3日)
 
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コメント

東京都民でないのが心残りなんですが、宇都宮先生の(多分苦渋の)決断が報われてほしい。というか、報われんかったら怒るよマジで
特に関連はないですが、宇都宮先生のカンパをしておきました。貧しいので2千円ですが

投稿: ゴメン、ハンドルネーム忘れちゃった | 2016年7月17日 (日) 04時03分

 宇都宮先生の心がダークサイドに傾きつつあるようです。恥をかかされた上に鳥越氏が大敗とあっては、絶望も深いでしょう。
 今は良識ある者は宇都宮先生(と鳥越氏)の心を支えるような行動・言動を取るべきなのですが・・・。

投稿: ゴメン、ハンドルネーム忘れちゃった | 2016年8月 3日 (水) 20時07分

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