インド 米企業による25000人の大量虐殺 ボパール化学工場事故が生んだインド原賠法と原発輸出という狂人の夢
1984年12月2日。インド。米国企業ユニオンカーバイトによって、最大2万5000人が殺された。
<おれはかつて人間だった。みんなはそんなふうに言う。>という書き出しで始まる小説『アニマルズ・ピープル』(インドラ・シンハ 谷崎由依訳 早川書房)では、それを「霧」と呼んでいる。
<あの晩、人々の吐く息は、雲みたいに白かった。そうして吐いた息の代わりに吸い込んだ霧の正体を、あのとき誰も知らなかったんだ。>
インド中央部の街、ボパール。殺虫剤を製造する化学工場のタンクに水が流入した。発熱反応によりガス化したイソシアン酸メチルが、その圧力でタンクを破り、40トンの「霧」が街を襲った。翌3日の夜明けまでに2000人以上が死亡。その後、さまざまな要因で亡くなった人を含めると、死者は1万5000人とも2万5000人ともいわれている。
史上最悪の企業犯罪。大量殺人の主犯としてユニオンカーバイトCEO、ウォーレン・アンダーソンが召還されたが、彼は裁判所に姿を現さなかった。
「逃亡犯」アンダーソンに対し、インド政府は、米国に引渡しを求める通知を送ったが、米政府はジェノサイド犯を匿った。
20年近い歳月が流れた2003年10月。遺族一家に支払われた賠償金は平均2200ドル(約24万2000円)。
2014年9月。ウォーレン・アンダーソンが死んだ。享年92。
これこそ、「法人」という名のエイリアンに乗っ取られたこの星の姿だ。
わずかな賠償金が支払われ、さらに7年近い歳月が流れた。
インドの人々の外国企業への怒りは、2010年8月にひとつの法律として結実した。「原子力損害賠償法(インド原賠法)」である。
東芝がまだ「企業」として存続しているのは、日本の原賠法のおかげだ。東芝製原発が爆発しても東芝の「製造者責任」は問われない。原発を所有する東京電力のみに損害賠償が課せられる。
2016年1月。東芝は自社製ノートパソコンに「発煙・発火の可能性がある」としてリコール(原状回復)。以後、回収、交換にかなりのお金を支払い続けている。しかし、東芝は「福島のリコール」に1円のお金も払っていない。
史上最悪の企業犯罪を経験したインドは違う。事故を起こした原発を製造したメーカーにも賠償責任が課せられる。
インドは「国際原子力マフィア」の支配を打ち破り、「当然あるべき法律」を制定したのだ。
7ヵ月後に「3・11」日本で原子力災害が起きた。
もし、東芝幹部がこう言い出したら、世界の人たちはどう思う?
「東芝製の原発が爆発しました。東芝製の原発は、世界一安全なので買ってください」
東芝は発狂した。発狂した、と書くしかない。
東電福島第一原発1号機を製造し、東芝に原発建設のノウハウを授けたゼネラル・エレクトリック(GE)はどう言っている?
<この法律がある間、GEはインドで原発ビジネスを追求しないだろう。われわれは民間企業であり、そのようなリスクはとれない>(GEインディア元CEO『マガジン9』佐藤潤一 2013年5月29日)
東芝よ、師の言葉を聞け!
米国の名門企業だったウェスチングハウスがもし、東芝に買収されていなかったら、GEと同程度の「正気」は保てていたはずだ。
<一方で、5月20日、インドとの原子力協定の交渉開始を伝えた一面記事(日経新聞)でインドには原子炉メーカーに責任を問える法律があることについて聞かれた政府関係者のコメントがこちら。
「世界トップクラスの日本の技術を堂々とアピールできる」(日本政府関係者)>
……(腰が抜けた)。
米国企業ウェスチングハウスの最新型原発AP1000は、カリフォルニア州など地震の多い地域での建設を米国原子力規制委員会によって禁止されている。
安倍晋三よ!
東芝よ!
原発輸出はできない。
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