アレバ社の怪談 消された「1968原発史上初の大事故」とショー原発4つのミステリー
広島、長崎、ベルギー領コンゴ、そして、アレバ社。
すべての点(惨劇の現場といっていい)を結ぶのが、フランス、アルデンヌ県にあるショー原発だ。
ショー原発A(1号機)は、ウェスチングハウス社製「世界最古」米シッピングポート原発の「コピー原発」である。
フランス初の加圧水型原発は、三方がベルギー国境という「突出地」に建設された。フランス、ベルギー両国に電力を送るためだ。フランスの原発はフランス電力が独占しているが、ショー原発A(1号機)だけは違う。「アルデンヌのフランス=ベルギー共同原子力エネルギー会社(SENA)」がフランス電力と共同で所有・運用していた。
アレバ社の前身「フラマトム」の所有者は、ベルギーのエドワール・アンパンと米ウェスチングハウス。「原爆男爵」にも札束が運ばれる仕組みが作られた。
ショー原発の建設開始は1962年1月。営業運転開始は1967年4月15日。
工期わずか5年3ヶ月!
「わずか」「!」と書いたのは、ウェスチングハウスの米本土での「実績」とかけ離れているからだ。
ウォールストリート・ジャーナルは、米国の原発建設についてこう書いている。
<1966年から1986年に建造された75の原子力発電施設は、計画当時の3倍のコストがかかった。>(2008年3月12日)
コスト超過=工事遅延。
最悪の「コスト超過」はどこだったのか?
<ボーグル原発は、10倍以上のコストがかかった。>
ボーグル原発を建設したのは、ウェスチングハウスだ。
ウィキペディアによれば、1976年8月1日に着工したボーグル原発2号機が、商業運転を開始したのは1989年5月20日。建設には、なんと、12年9ヶ月もかかっている。
仏加圧水型原発第一号を動かしたあとのアレバの動きも奇妙だ。
第一号になんの問題もなければ、すぐに次の建設計画が持ち上がるはずだが……。
アレバ(フラマトム)製原発第二号。フェッセンハイム原発。
建設開始 1970年9月 営業運転開始 1978年1月
第二号建設開始まで8年近い空白期間がある上、工期は7年3ヶ月に及んでいる。
わずか5年の工期で、ショー原発Aが「順調に」建設されたのはなぜなのか?
「アレバ文書」こそ明確な回答だ。
アレバ社は、1965年以降、51年間ずうっと原発部品の品質証明書を偽造していた。
アレバの犯罪は、ショー原発の建設中に開始されたのだ。
品質証明書偽造部品をがんがん設置し、素早く運転開始したらどうなった?
「アレバ社の原発事故は隠された」
そう告発するのは、ジャック・シラク政権の環境大臣コリーヌ・ルパージュだ。
<一九六九年><サンローラン・デ・ソーの事故では炉心を構成する燃料要素のうち五体が溶融したものの最悪の事態は免れることができました。>(『原発大国の真実』)
この事故についてはグーグルで簡単に検索できる。
<フランス原子力史上最も大きな事故><レベル4>(ウィキペディア日本語版)
この事故はフランスで大論争を巻き起こした。
<サンローラン・デ・ソーの事故はフランスが黒鉛減速ガス冷却炉から別の炉型に切り替えるきっかけとなりました。>(『原発大国の真実』)
アレバは一貫してこう主張してきた。
「加圧水型原発は安全かつ経済的です」
アレバ(フラマトム)が建設した原発以外はすべて永久閉鎖となった。独占完了。
ところが……。
<闇に葬られてしまったさらに深刻な事故についても触れておかなければならないでしょう。一九六八年にフランスのシャンパーニュ・アルデンヌ地方のショー原発で起きた事故のことです。この事故では冷却系配管のサーマルスリーブが破損して原子炉内に水が循環しなくなる状態が数時間にわたって続きました。>
ショー原発は運転開始直後に配管破損の重大事故を起こしていた。しかも、全廃された黒鉛減速ガス冷却炉の事故の前に。
<1974年にフランス電力の社内報告書が公表されたが、一般にはあまり関心をもたれることはなかった。イヴ・ルノワール著『フランスの官僚支配』(未邦訳、一九七七年、J・J・ボヴェール社)より。>
事故は6年間も隠された。
ショー原発Aのミステリーはそれだけではない。
1991年10月。ショー原発Aは永久閉鎖された。運転期間24年半。
これだけ読むと、誰だってこう思うよね。
フランス政府は「原発の寿命は25年」と定めている。
ところが……。
<フランス最古の原発、ドイツが閉鎖を要求 仏当局は拒否>(AFP 2016年3月5日)
これは「今年の記事」である。
ショー原発Aが消え、フランス最古の原発となったフェッセンハイム原発で重大事故が起きた。
<2014年4月9日、2つある安全装置の1つで水漏れが発生し、一時的に原子炉をコントロールできなくなった。>
ショー原発Aの1968年の事故と同様の事態である。
<原子炉冷却システムへのホウ素投入が決断されたが、仏原子力安全局(ASN)の報告はホウ素投入に言及していなかった。>
またしても、フランス政府は事故を隠そうとした。
原子力安全の専門家であるマンフレット・メルティンスは、メディアにこう語っている。
<西欧の原子炉でホウ素を使ってシャットダウンすることを余儀なくされた事例を私は他に知らない>
フェッセンハイム原発の運転期間は、38年5ヶ月!
<しかし、仏原子力安全局は「原子力保安の観点から見て、フェッセンハイム原発を閉鎖する理由は一切ない」と回答。>
「御年38歳の原発を動かし続ける!」
フランス政府は、頑として言い張る。
一方、ショー原発Aは、今から25年前に消えた。享年24歳。
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