メルマガで新連載を開始します。 青少年のためのILL BONE
青少年のためのILL BONE
歌うことは苦行だ。本当に疲れる。
多分、歌うことは「田園を引き寄せる」ことだからだろう。
草いきれ、鳥の声、木の葉のささやき、動き消える陽光とともに。
新宿の地下へ。傷だらけの鉄の扉へ。
引き寄せる。
死ぬまで数だけを数えている脳味噌へ。
踊りに行こうよ。
町にザ・タイガースの歌声があふれていたころ、兄はガット・ギターを手に入れた。兄が出かければ私のものだ。
戦争を知らない子どもたちさ。
C Aマイナー F G
今日の日はさようなら。
やっと自分のギターを手に入れ、最初に練習したのは、遠藤賢司の『カレーライス』だった。
きみも。猫も。うん。僕も。
固き土を破りて、民族の怒りに燃ゆる島。沖縄よ。
両親は教師で共産党員だった。
日曜日になると、兄と私はデモや集会に引き回された。
沖縄を返せ!
スローガンを書いたボール紙をサンドイッチマンのように着せられた。
核兵器廃絶!
岡山駅から城に向かう大通り。
デパートの屋上に小さな観覧車があった。アドバルーン。
いやでいやで仕方なかった。
だって、他のやつらはあそこで遊んでいる。ソフトクリームをなめている。
4人の家族は土臭く不機嫌だった。
夢中になったのは、江戸川乱歩「少年探偵団」シリーズだった。
緑衣の鬼。
人間豹。
誰もいない浜辺に打ち捨てられた水族館がある。
水槽の中の全裸の死体。
私はまねをして文字を書くことをおぼえた。
顔を塗りたくった口のでかい白人が表紙。
ザ・ローリング・ストーンズの4曲入りレコード買ったのは、中学何年生のころだったか。
ジャンピング・ジャック・フラッシュ。
一人ぼっちの世界。
ストリート・ファイティング・メン。
ルビー・チューズディ。
わけがわからなかった。少なくとも、それは「きれいな歌」「整った音楽」ではなかった。
わけがわからぬうちに『ジャンピング・ジャック・フラッシュ』を十回以上繰り返し聴いた。
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