東芝「サンアントニオ4552億円詐欺事件」の全貌 本当は71億ドルの原発建設費を57億ドルと偽り入札した東芝の犯罪 市議会が暴露
そんなさなか、海の向こうの狂った男が狂ったことを言い出した。
「原発の新設に約7500億円の融資保証を行う」(バラク・オバマ大統領)
私が見た「生涯で最も解せないニュース」である。理解不能。想像を絶している。納得できるわけがない。
「原発に投資をしてください。あなたがお金を貸して、たとえ、原発が動かなくても、貸したお金の7~8割は税金でお支払いします」
14万人以上が家を失い、ふるさとを追われ、逃げ惑い、寒さに震えるなか、日本の同盟国のリーダーがそう言っているのだ。
米国人の血税をばら撒く相手は決まっていた。
ユニスター、スキャン、NRGエナジー、サザン・カンパニー。
米国の原発関係者、ジャーナリストは絶句した。
「なんで、NRGエナジーがここに入っているの!?」
<慈悲深い神は、どうしてこのようなことをお許しになったのだろう。私は手に負えない皮肉屋だが、これは極限のヨタ話だ。>(グレッグ・パラスト『告発!』早川書房)
テキサス州の電力会社、NRGエナジーは、東芝の子会社、ウェスチングハウスによってひどい目に合わされていた。投資したサウス・テキサス・プロジェクト原発1・2号機の建設は大幅に遅れた。当初の予定の5倍の建設費を支払わざるを得なかった。
「安全基準が守られていない」という内部告発が次から次へと出てきたが、NRGの対応はひとつだけだった。
「社に歯向かったやつは全員、クビ」
NRGは現場の建設会社をつかい、原発のロッカールームの天井に3インチの小型カメラを取り付けた。
「誰が歯向かっているのか見つけ出せ! 全員、クビだ」
NRGに罰金を命じ続けた米国政府は、「NRGエナジーは、原発の運営には“倫理的に”不適当」という烙印を押した。
原発投資で破産寸前。ふらふらになったNRGは、起死回生を狙った英国電力会社買収にも失敗し……。
2003年。破産申告。
つぶれた会社じゃん!?
いいえ。国家権力と表裏一体、政府という名のコインの裏の顔である原発企業はつぶれない。
投資家のウォーレン・バフェットが「ホワイト・ナイト」として登場し、株を買いまくってNRGエナジーを救済した。現在も最大株主はバフェットなのだ。
バフェットは「株の神様」と呼ばれているが、とんでもない話だ。こいつ、NRG株を「最高値買い」し、株価は下落を続け大損をした。
バラク・オバマが大統領になると、バフェットは経済顧問としてホワイトハウスに入った。
なぜ、「極悪企業」NRGが、政府保証を受けたのか?
「裏のストーリー」がわかりやすすぎて、この「税金泥棒物語」は、プロレスにもなっていない。
これだけでも唾棄すべきお話だが……。
NRGに輪をかけた悪党が、ニヤニヤ笑いながら太平洋を越えてやってきた。
悪党の名は、東芝。東芝の社風はしばしば「お公家集団」と呼ばれる。
2008年3月。東芝のプレスリリース。
<米国でのABWR型原子力発電所の事業開発会社への出資について>
出資額は3億ドル。
悪党どもは表に出てこない。かくして、「覆面企業」ニュークリア・イノベーション・ノース・アメリカ(NINA)が誕生する。
出資比率 NRG 88% 東芝 12%
極悪企業NRGは、「倫理的に不適当」だった過去を捨て、いたいけな少女を連想させる「ニーナ」ちゃんに変身した。
ここからは、完全な詐欺だ。
カモにされたのは、アラモ砦で名高いテキサス州サンアントニオの市民だった。
サンアントニオ市にあるサウス・テキサス・プロジェクト原発の所有者は、サンアントニオ電力公社(CPSエナジー)。その名のとおり市営企業だ。CPSも1・2号機建設で大損害を受けたが、NRGは、「今度の話はまったく違う」と言って再び擦り寄ってきた。
「オバマ大統領と話はついている。トラブルが起きても投資金の7~8割は政府が税金で穴埋めしてくれる。折半、フィフティー・フィフティーで原発を新設しましょう」
折半の意味は、CPSが50%出資、「覆面企業」NINAも50%出資。
実際は違う。
市営企業CPS 50% NRG 44% 東芝 6%
「所有者はあくまでサンアントニオ市であり、NRGは少数株主」
NRGは、「ニーナ」ちゃんの少女仮面をかぶり、その上に「私たちは市民に仕える公僕です」という鉢巻を巻いた。
偽装が施された。
NINAが政府に提出した入札額は、偽装ではなく「偽証罪」にあたる。
建設費は一基あたり57億ドル。
誰がどう見たって安すぎる!
同じく政府保証を獲得したジョージア州ボーグル原発(ウェスチングハウス社製)の入札額は70億ドルである。ウェスチングハウスは東芝グループ。グループ内で13億ドルもの差が出るのは、どう考えてもおかしい。東芝製原発が、子会社であるウェスチングハウス社製原発より13億ドルも安いのなら、ウェスチングハウスの原発を買う人間は誰もいない。
2009年2月。東芝はサウス・テキサス・プロジェクト(STP)原発3・4号機の設計・調達・建設を一括で受注した。
長年、NRGと闘ってきたジャーナリスト、グレッグ・パラストの元に差出人の名前のない小包が送られてきた。資料の袋には「STP」と大書されていた。
<東京発の資料のなかに手書きのメモの数字があり、私には原子炉建屋の建設費に関する個人的な試算に思えた。これは、実際の請求額になるものだ。メモは内密の企業情報として書き加えられた数字があり、足し算すると71億ドルに達していた。>(『告発!』)
やはり、原発一基の本当の値段は70億ドル超だったのだ。
おそらく、パラストに届いたものと同じ内部告発資料が、市営企業CPSエナジー、サンアントニオの市議会議員にも届けられた。
2009年10月。CPSエナジー幹部は、東京に飛び、東芝本社に乗り込み直談判した。
「経費の増大は受け入れられない」
パラストが受け取った別の資料には、次のような記載があった。
<57億900万ドル→142億7200万ドル÷2=71億ドル 一基につき(秘密)>
解読はむずかしくはない。
表向きの入札額は一基57億900万ドルだが、本当の建設費は2基で142億7200万円。2で割って一基あたり71億ドル(でもこれは秘密だよ)ってことだ。
「秘密」を東芝が正直に話したのなら、CPSがわざわざ東京まで行って抗議することはありえない。水面下で話し合い、CPSが損害金をもらって手を引けばそれで終わりだ。
ところが、政治の表舞台で大問題となった。
「プロジェクトの総額が入札時より40億ドルも高いという情報を入手した。この情報はサンアントニオ市議会にはまったく知らされていない」
東芝の「秘密」は、サンアントニオ市議会で暴露されたのだ。
11月。CPSのゼネラルマネージャーと理事会会長が辞任した。議会に対し、CPSが「秘密」を正直に話していたら、同社幹部が辞任に追い込まれることはありえない。
内部告発がなかったら、NRG、東芝、CPSは、ウソをつき続けていたに違いない。
東芝は、サンアントニオの100万人を超える市民から約4552億円を詐取しようとしていたのだ。
当然、CPSは東芝を訴える裁判を起こした、恥知らずの東芝は、なんと、カウンター訴訟で応えた。
「ニーナ」ちゃんの逆ギレは記憶されていい。
「CPSが投資した3億ドルを放棄してプロジェクトから撤退するか、出資を継続するか、どっちかに決めろ!」
「日本を代表するメーカー」東芝は発狂した。
サンアントニオはアメリカの中心「ハートランド」の大都市だ。市民は、古くからある市営電力会社CPSを信用し、請求書のとおりの電気代を支払ってきた。
ある日、「NINA」という聞いたことのない名前の会社から請求書が届き、先月より電気代が高かったら、誰が金を払う? 東芝は「顧客」というものをどんな風に考えているのか?
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