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2014年6月15日 (日)

W杯日本代表の敗北 渋谷でハイタッチを交わす感情なき群れ サッカーのために強制退去 家から追い立てられた25万のブラジル棄民http://www.mag2.com/m/0001577514.html

 間違いなく歴史に残るFIFAワールドカップが始まり、日本代表は負けた。

 試合前、アルベルト・ザッケローニ監督は持論を繰り返した。

「日本人の人口は1億3千万人ですが、3億9千万人だ、と私は言ってきたのです。一人が3人分の仕事をこなしているからです」

 いやな予感がした。

 本当にそうなのか?

 本当にそうだとしても、今、この国は「残業代ゼロ」つまり「2億6千万人の給料」をただにしようとしている。

「ただ働きの国」の代表がピッチに現れ、予感が的中した。

「日本代表は変わった」

「本田は我らの英雄だ」

 4年間にも及ぶプロパガンダ。私もそう信じたいと思っていたのだが……。

 どこに誰がいて、何をやっているのか、さっぱりわからない!

「2億6千万人の日本人」が、幻であるように。

 ザッケローニ監督は見抜いていた。

 日本代表は「卓越した個人の集まり」というよりも「法人」に近い。日本人が集団でワーッと動くとどうしてもそうなってしまう。

 後半。先発から外れていたコートジボワールの英雄、ドログバがピッチに姿を現すとスタジアムの色が変わった。

 ドログバの運動量は全盛期より明らかに落ちている。ドログバが「3人分の仕事」をしたわけではない。

 しかし、ドログバにボールが渡り、ボールを「止めた」だけで「目的」がはっきりと立ち現れる。

「俺はなんのためにここにいるのか?」

 ボールが止まり、卓越した個人の集まりが動き出す。そこに「起点」と「目的地」がはっきりと見えているからだ。

 ものが違う。

 なんぜ、ドログバは「たった一人で内戦を止めた男」なのだ。

 2003年。コートジボワールで反政府軍が蜂起。南北を分断する内戦状態に陥った。

 2005年。ドイツ・ワールドカップ進出を決めた試合の後、ドログバはマイクを取った。

コートジボワール国民の皆さん、今日、ワールドカップ出場という共通の目標のもと、コートジボワールの様々な民族が共存してプレーできることが証明されました」

 歓喜の更衣室。チーム全員とともに。

 オレンジのユニフォームは、国民融和のシンボルになっていた。

「歓喜によって人々は団結できます。今ここでひざまずいてお願いします。どうかお願いです! お願いです! 豊かなコートジボワールで内戦が起きるのは許されません。武器を捨ててください。そして選挙をしましょう。それですべて良くなるはずです」

 殺し合いは止まった。

 試合に負けたのに、「サムライブルー」のユニフォームを着た若者たちは、渋谷のスクランブル交差点に押し寄せた。

 慰めあうため?

 ともに泣くため?

 彼らは満面の笑顔をでハイタッチを繰り返している。

 ……(腰が抜けた)。

 ちょっと論評する言葉が見つからない。

「洗脳」は解けない。てゆーか、そもそも「感情」がない?

 日本社会にはもう、「怒り」も「悲しみ」もないの?

「前向き」な感情しか存在を許されないの?

 これは同じ地球上で起きていることなのだろうか。

 ワールドカップ誘致決定後、ブラジルでは最低でも25万人が強制退去させられた。力づくで家から追い立てられたのだ。

 2014年6月16日。「侍ニッポン」が闘ったレシフェでも約12000人が家を失った。

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