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2010年11月 7日 (日)

千葉ロッテマリーンズのファンは世界一!! さあ、『虹の彼方に』を歌おう!

 エモやんが「へぼなチームは延長戦が多い」と言って、カメラがレフトスタンドに切り替わった。

 泣きながら応援歌を正確無比に歌っている女の子が映って、目頭が熱くなった。

 スーパースターがいないチーム?

 おるやんけ!

 レフトスタンドに。

 美酒とともに歌おう!

『虹の彼方に』を。

 わしが昔書いた原稿をマリーンズ・ファンに捧げます。

 おめでとう! 本当によかった!!

 オーバー・ザ・レインボー。
 潮風に乗って、甘いメロディが人工芝へと
放射される。歌っているのは、白いピンスト
ライプに統一された若き混声合唱団である。
 マーリーンズ ウォーウォウォウォー ウ
ォーウォーウォー
 千葉マリンスタジアムでの激闘は、こんな
風に幕を開ける。
『オーバー・ザ・レインボー』は、ジャズの
ライブなんかだったら、エンディングにこそ
ふさわしい曲である。それをオープニングに
持ってくるところがなかなかニクい。
 名曲の余韻が太鼓の連打にかき消される。
 エル・オー・ティ・ティ・イー ウォー ロ
ッテ!(リフレイン)
 気になっていた。最初の驚きは、今年春の
ジャイアンツとのオープン戦だった。場所は
東京ドーム。球界のオールスター総出演とい
った趣の日本一の人気球団と、パ・リーグの
最下位候補の対戦。しかし、応援の声はレフ
トスタンドのほうがはるかに大きかった。さ
らに驚いたのは、試合後半に河本育之が登板
したときだった。
「カネで転んだ裏切り者!」
「オレンジが似合わんぞ、河本!」
 そういう怒号が出て当然の場面。甲子園球
場だったら、絶対、そうなる。
「守護神カ・ワ・モ・ト!」
 声援を送っているのは、ライトスランドで
はなく、黒一色のレフト側だった。
 私は、千葉マリーンスタジアムのライトス
タンドに潜入することを決意した。
 5月16日、対ダイエー戦。
 最初に断っておかなくてはならないのだが、
試合自体は見るべきところはほとんどなかっ
た。特にマリーンズには……。
 1回に石井浩郎のサードゴロの間に坂井忠
晴が生還してマリーンズが先制。しかし、7
回に小久保裕紀に吉田篤史が逆転ホームラン
を浴びると、8回には満塁にされ、2年目の
清水直行が秋山幸二からセンター前2点タイ
ムリーを浴びた。3点差。残るは2イニング。
マリーンズはここまでわずか3安打。
 小坂誠がファーストゴロに倒れる。代打、
諸積謙司が告げられると、ライトスタンドが
揺れ出した。
 モーロ モーロ モーロ モーロ
 特に「危険地帯」というダンボールの標識
が出ていた応援団の中心は強烈だった。
「これはパンクバンドのライブなのか」
 体をぶつけ合ってジャンプする応援団。そ
の熱狂に押し出されるように、諸積がセンタ
ー前ヒットで出ると、大諸積コール。塁上か
らライトスタンドへ手を上げる諸積。
「普通、点を取ったときだけだろう」
 そういう疑念は、さらに激しくなった「ジ
ャンプ大会」の喧騒にかき消された。
 ロッテ! マリーンズ ロッテ! マリー
ンズ ウォー!
 驚いたのは、その連呼が、酒井の平凡なラ
イトフライを見せられても、同じボルテージ
で続いたことだった。このスタンドにはため
息がない。もうひとつ、このときになって気
づいたのだが、私の視界になかには「おじい
さん」が一人もいなかった。おじいさんがい
ない外野席というのは初めて座った。私が愛
していた藤井寺球場のライトスタンドなんて、
壮年以上がほとんどだったぞ。
 私もジャンプ大会に加わりながら、編集者
に向かってこううめいた。
「こりゃ、ロッテが勝つよ」
 なんの根拠があって? グランドを見ると、
たった一本ヒットが出ただけの2死一塁。か
つては塁に出れば盗塁を決めていた感のあっ
た諸積は走る気配すらない。それでも、ロッ
テが勝つと確信したのは……。
「ピンストライプの選手たちよ。この膨大な
エネルギーをただ、東京湾の潮風のなかに消
費させておいていいのか」
 そういう思いからだったのか。いや、本当
のところ、熱に浮かされていた私にもよくわ
からない。脳ミソは揺れている。
 イワーイワーオー!
 スタンドの絶叫も空しく、代打、大村巌の
バットはボールにかすりもせずに三塁前に飛
んでいった。
 それでも、彼らは絶叫する。敗戦処理のマ
ウンドに向かう和田孝志の名前を呼ぶ。
「いい人たちに会った!」
 千葉マリン、ライトスタンド初体験の感想
はこれだった。
 翌日、「危険地帯」の真ん中で飛び跳ねてい
たヤングに話しかけた。
――あなたをここまで熱狂させるマリーンズ
の魅力ってなんですか。
「う~ん。ロッテの魅力ですか。う~ん」
 いきなり考え込まれても……。まあ、昨日
の試合を見た私は、その逡巡、わからぬでも
ないが。考え込みながらこんなことも言う。
「もう中毒ですね。こんな熱い応援は他球団、
いや、すべてのスポーツで他にないでしょう。
僕はロッテを応援するために仕事を辞めて多
摩から千葉に引っ越してきたんです」
 仕事と家を捨てた!? 魅力を言葉にでき
ないチームを応援するために? 今度はこっ
ちが言葉を失ったぞ。
 危険地帯の前で、お肉中心の巨大なお弁当
をガシガシ食べていた熟女のお方こう言った。
「そりゃ、弱いからよ。スタンドが熱狂的に
なったのは、あの19連敗以降でしょう。連
敗で団結力が強くなった。弱いからこそ、勝
った時の喜びは大きい。限りなく大きい」
 彼女の話によれば、19連敗中、ヒッチハ
イクをしながらマリーンズナインを追いかけ
たヤングもいたという。
「ここまできたら、勝利の瞬間は見逃せない。
そのときは俺、思いっきり泣くぞ」
 そういうことなのか。
 応援団長の石井務さん(28)は言う。
「ロッテの魅力は、と聞かれても自分の人生
の一部だから、理由を言葉にするような次元
じゃないですよ。応援が変わってきたのは、
ボビー・バレンタイン監督のときですね。自
然発生的といっていいでしょう。毎日ここで
顔を合わせている連中が、自然に集まってで
きたという感じですね」
 万年最下位チームを再生させ、優勝へあと
一歩のところまで引き上げた名将、ボビー・
バレンタイン。洗練されたバタ臭い応援は、
陽気なニューヨーカーでもある監督の心に届
かせるために生まれたのかもしれない。
 その日も試合は散々だった。5回、大塚明
の逆転ツーランでライトスタンドは爆発した
が、『デビルマンのテーマ』と重々しいコール
を背にマウンドに仁王立ちした守護神、ブラ
イアン・ウォーレンが打たれる打たれる。ま
るで打撃練習。坊西、井口、本間、村松の連
続ヒットであっさり逆転。
 私なら帰る。しかし、席を立つ人はひとり
もいない。代打・諸積が告げられると、また
してもスタンドが揺れた。
 メッツの監督として3月に来日したボビ
ー・バレンタインがテレビでこんなことを言
っていた。
「日本のファンに再会できてうれしいよ。た
だ、残念なのは、日本のチームとのオープン
戦で、応援を自粛したことだね。メジャーの
選手にあの外野スタンドの熱気を伝えたかっ
た。あれは素晴らしい日本文化だよ」
 そのときは、「何を言ってるの、このアメリ
カ人は」と思った。しかし、マリーンズのラ
イトスタンドにまぎれ込んでみて、深く納得
した次第である。
 スタンドの専門学校生はこう言った。
「応援しがいのあるチームですよ。若手をど
んどん引き上げてじっくりと育てるでしょ。
FAでがんがん補強して若手を腐らせている
どこかのチームとは違う。僕が支えなきゃと
思わせるものがある。夢もある。福浦はケン・
グリフィーJrになりますよ」
 そりゃあいくらなんでも言いすぎ……いや、
正しい野球ファンとはそういうものだ。
 さあ、今宵も歌おうじゃないか。
 虹にむこうには、きっと栄光と美酒が待っ
ている。

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コメント

中田先生のこの記事、実は「中田ファン」の私の「イチのお気に入り」なんです。
マリーンズ・ファンの一人として、まず「中田さんがMをネタにしてくれた」ということが凄く嬉しかったんです。
雑誌、大切に残してあります。

笑って笑って、頷いて。
最後の最後、なんだか胸が熱くなって・・。
マリーンズ・ファンの仲間と飲むと、よくこの記事のネタを話したりもしています。

やっぱり改めて、素晴らしい記事ですね。
本当にありがとうございます。

先生に、真に僭越ながら「お願い」があります。
「CSと、どう向き合うべきなのか」。
ぜひ一度、ご意見を拝聴したいです。

私は、「CS反対派」です。
「敗者復活戦なんか要らない」「3位が日本一なんてあり得ない」。
6チームしかないのに、3チームが戦う。
おんなじチームと。

「マリーンズ日本一」は、やっぱり嬉しいんです。
でも、どうしても「心の底から」とは・・。
ホークスって、何だったのか。
「最後の最後だけ滑り込みで頑張れば、リーグ優勝を凌駕出来る」。

そんなの、「アリ」でいいのか・・。

胸の痛い、後ろめたい夜・・です。

投稿: 甲府 | 2010年11月 8日 (月) 02時19分

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