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2009年9月 5日 (土)

連載です

「脱いだ女」「脱がなかった女」の50年史④

 監督が「友達の半分が死んだ」と言う終戦の直前。ボロボロの毛布を脱ぎ捨て、廃墟へと駆け出す大谷直子。ぽっちゃり感が女学生そのもので息を飲む美しさ。あのモノクロの素っ裸は「生きていること」そのものであり、同時に映画の困難な時代を切り拓くパイオニアの姿でもあったのか。

 今もガンと闘う大女優が、「(裸になることへの抵抗感は?)全然、全然。こんな体でよかったら、ですよ」とさらりと言う。

 やっぱり、日本の映画は最高だ!

岡本喜八は、すでに東宝の職人監督として、コメディから時代劇まで佳作を連発していたが、『肉弾』のシナリオだけは「こんなもん、売れないよ」と会社からつき返された。結果、低予算で制作されATGが配給、となるのだが、まだ女学生だった大谷直子の気前のよさこそ、森下愛子の『サード』、石田えりの『遠雷』など、「脱ぎっぷりのいいATG作品」のさきがけとなった。

 そして、大谷直子、関根恵子らパイオニアの奮闘が、70年代の映画の「裸祭り」――その先鞭を告げた由美かおるの『同棲時代―今日子と次郎―』につながっていく。

 この映画、同級生と再会したその夜に「どこかに泊まろうか」とヒロインの方から誘い、ピンク色の乳首が乳房の中心に位置し上を向いている美しすぎる裸体をスポーンと投げ出す導入部がまず素晴しい。

 ストーリーはお決まりの妊娠、中絶をめぐる「若さゆえ」のせめぎ合いだが、

「私、これからもっと老けるわ。シワも増えるし、肌もかさかさになるわ」

 この予言は大ハズレ。今年で『水戸黄門』の入浴シーンが200回を迎えるのも、由美かおるの揺るがぬ「奉仕精神」ゆえだろう。  

 友達が花粉「病」で「お嫁に行けない体」になったり……。隣の奥さんの肺病をいっしょに暮らす夫だけ気づかず、クラシックを大音量で流し、背景が真っ青なスタジオ撮影(貧乏なアパートはどこに?)でSMプレイを始めて人殺しをしたり……。内容のサイケデリックさもものすごいが、オールヌードで「ケチくささ」のかけらもないポスターが巻き起こした前評判こそ、まさに「お祭り」であり「事件」だった。

 貼れば盗まれる、のいたちごっこは、ついに3万円のプレミアがつく争奪戦に発展! なんと、7万枚も刷られたポスターに3万円の値がついた。当然のごとく、由美かおるが舞台挨拶に向かった銀座の映画館はスケベどもによって二重三重に包囲されていた。

 人情喜劇の松竹まで「裸祭り」を始めると、都会的な感性と高級感で売った東宝も負けてはいない。

『同棲時代』公開と同じ1973年。『赤い鳥逃げた?』の桃井かおりは、ジーンズの上は常に裸(!)でだるそうに銀幕を漂い、

「サービス精神なのか。それとも、裸族なのか」

 観る者をたじろがせた。

 日活はすでに「ロマンポルノ」路線に腰を据えて、裸満載映画を量産していたが、若い女優探しは困難を極めた。初期のスター、白川和子、宮下順子はデビューしたときからすでに玄人っぽく、呑み屋の女将風であった。縄のれんの町で一番安い酒場のような気楽さが筆者は大好きだったのだが、社員を悩ませたのは、お正月や夏休みの番組だったという。

「元旦からポルノじゃ、完全なダメ人間だよなあ」

 そういう顧客のため、一般映画を作りポルノ作品と併映したが、そこに投入された最終兵器が秋吉久美子である。

 1974年、藤田敏八監督と組んで『赤ちょうちん』『妹』『バージンブルース』を立て続けに公開した秋吉久美子ほど、多面性を持った女優はいないだろう。

「70年代って、痛がる時代だったのよね」

 この発言に代表される「秋吉語録」で文化人をKO。一方で、「クラスメート」を感じさせる子どもっぽさ、親近感で田舎の中学生をも虜にした。なおかつ、脱ぎっぷりは当時ナンバーワン。乳房もお尻も完璧なフォルムとなれば、「裸祭り」の神輿のてっぺんには「妖精」秋吉久美子がいた、と書いても異論はあるまい。

「素っ裸の妖精」の登場で、最もダメージを受けたのは、おそらく、「ポルノの女王」池玲子、「牝豹」杉本美樹を押し立てていた東映である。

「どうよ? エロだろ? バイオレンスだろ?」

 裸でバイクを駆るなど、直球で勝負してきた東映の「スケバン」や「ズベ公」だが、世のスケベたちの視線は、180度イメージが違う秋吉久美子に集中するようになる。そこで……。

 アンヌ隊員出動!

『ウルトラセブン』でちびっ子、特撮ファンの心をがっちり掴んだひし美ゆり子が、石井輝男監督、丹波哲郎主演の『ポルノ時代劇 忘八武士道』に登場。意外かつ素晴しい展開である。

「忘八」とは「八つの人間の正しい心をすべて忘れる」ということらしい。主人公の明日死能(あしたしのう)に着物を切り刻まれ、手下に犯され、大の字に縛りつけられて即、競売にかけられる(どんな展開だ!?)ひし美ゆり子は、まさに東映「ヤケクソ・タッチ」でいたぶられる。ひし美ゆり子は「グラマラス」というより「健康美」であり、そこがまた、インモラルな「石井輝男ワールド」をきわ出させる。

 時代劇黄金時代そのままの絢爛豪華なセットと次から次に剥かれていく乳と尻の奔流は、まさに東映「裸祭り」の真骨頂。無謀、無意味をためらいなく走り切る(実際、全裸の集団が江戸を走る!)ひし美ゆり子の姿には、「廃墟の花」という言葉こそふさわしい。

「ヤケクソ・タッチ」といえば、すでに歌謡界で不動の地位を築いていた五月みどりの初主演作『五月みどりのかまきり夫人の告白』も常軌を逸している。

 五月が誘惑したカーレーサー(白石襄)は、セックスしたとたんに命が惜しくなってテストドライバー転向を決意。最後のレースで死んでしまう。ここまで、映画が始まって約15分。

 5分後には隣の入り婿と抱き合っていて、「ほんの浮気だったのよ」で関係はジ・エンド……。しかしまだ、30分経過していない。

 年齢から「熟れた肉体」を想像していた観客は、五月みどりのピチピチの乳房、お尻に驚く間もない。

 別荘の近くで取っ組み合いの喧嘩をするベルボトムの二人組を見て、

「ホモを治してあげる!」

 みどり姐さんは一念発起……といった破壊的な展開で、最後は『ゴルゴ13』の世界にまで突き進む。

 1970年代、映画館はまさにスケベどもの天国であった。

 しかし、ひし美ゆり子、五月みどりの「場末への降臨」は、80年代から始まる「再生可能な時代」――ビデオデッキが普及した世間と映画との死闘を予兆するものでもあったのだ。

 銀幕のヒロインたちの「肉弾攻撃」の激しさ、華やかさ、はかなさは……。  

 次号につづく!

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