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2009年9月 7日 (月)

連載続き

 映画の原稿って、批評でしょ!

 連載を続けます。

「脱いだ女」「脱がなかった女」の50年史④

「舐めたらいかんぜよ!」

 日本映画史に残る名セリフ……なんだろうけど……。この場面、「かっこいい」と思った観客はいただろう。しかし、「スカッとした」観客が果たしていたか。

 五社英雄監督の『鬼龍院花子の生涯』は、狂った侠客(仲代達也)が支配する特殊社会に囚われた聡明な女性(夏目雅子)の物語である。夏目雅子がそこから脱出できるかどうか、が強烈なカセ(物語を転がす動力)となっていて、映画の設定として申し分ない。

 彼女を救出せんとして、仲代から指詰めを強要された労働運動家(山本圭)はこう吐き捨てる。

「いいか。きみは一日も早く、いや、たった今すぐにでも、こんな人間のクズの集まりから逃げ出すべきだ」

 男の本能のみでイケイケの仲代が、ある日、鉄道会社のスト破りに。しかし、山本を一方的に殴りまくるうちに意気投合。

「資本家あるところに労働者あり。労働者あるところに団結ありじゃ。今こそ、弱い者や貧乏人を助けるのが侠客の道よ」

 この意外な展開も昭和初期の一局面として興味深いが、その直後の豹変は理解しがたい。

 仲代の命令で投獄された山本に差し入れを続ける夏目。出所した山本に仲代は、

「おまはんの放免祝いに、わしからなんぞ贈りもんしたいと思っちょるが、ほしいもん、ありますろうか。なんでも言うてや。この鬼政にできんことはなんちゃあないきね」

 現地人怒りまくりのウソ方言で、大見得を切っておきながら、山本が、

「松恵(夏目)さんをいただきたい」

 この一言に瞬間湯沸かし器と化す仲代。

「お主みたいな泥棒猫はぶった斬っちゃる!」

 自分は、妾3人を屋敷に置いて毎夜、3Pやってるのに……。

「親の目盗んで娘と乳繰りおうて、この恩知らずの犬畜生が!」

 婚前交渉は死刑かよ!?

 山本圭は、前日まで刑務所にいたんだから、どう考えても潔白だろ!?

 ここで、観客も「仲代はとんでもないバカだ」と気づく。そこまで、仲代達也が新劇丸出しの大芝居をするので、インテリに見えてしまうのもこの映画のつらいところ。

 夏目を遊郭に呼びつけて犯そうとする仲代。

血のつながりがなければ、親が子を犯していいのか、仲代!?

ここで、夏目雅子の予想を超える豊満な乳房、赤みがかった乳首がチラリと見える。

 夏目雅子には「バストポイントの露出はNG」という化粧品会社とのCM契約があったので、五社英雄監督の粘り勝ちだろう。

「死にます」

 割れたガラスで夏目が自殺を図ると、仲代は、

「おまん、そんなにわしが嫌いか」

 当たり前だろ!

「夏目雅子が脱ぐらしい」という前評判にあおられて来たスケベどもも、おそらく、映画館の闇で念じていたはず。

「夏目雅子よ、このバカから逃げろ!」

 ところが……。

 仲代の正妻、「姐さん」岩下志麻が腸チフスになると、

「歌は松恵の母親じゃき、子が親のめんどうを見るのは当然じゃ」

 自分は容態を見にも行かないで逃げ回っている仲代の命令に笑顔で応えて死にかける夏目雅子……なぜ!?

 岩下が凄絶に息絶えると、山本とあっさり結婚。労働運動に燃えるが……。

 なんのためのカセ!? ここまで心配させておいて、なんで、簡単に逃げるかな?

 でもまあ、「よかったなあ」と胸をなで下ろすと……流産!

 不幸の連続。傷心の夏目は……仲代の屋敷に戻ってきて、バカに囲まれ笑顔を取り戻す……なぜ!?

 いや、それ以前に、宮尾登美子がこんな物語を書くか!?

 原作を紐解いてみて、やっぱり! 

 似て非なる、ではない。原作はまったく別の物語で、ヒロインは鬼政が死ぬまで逃走を願ってやまない。和解などあるわけがない。

 映画の夏目雅子は、カセを破壊し続けるブルドーザーと化し、大組織のヤクザに山本が刺し殺されると、実家の葬式に殴り込み、暴力で遺骨を奪う。

「舐めたらいかんぜよ!」

 大作家の傑作も舐めちゃいけないんじゃないかなあ……。

「筋は通したかよ?」との仲代の問いにうなずく夏目。日本刀一本で「死にに行く」仲代の肩に般若模様の死に装束をかけ、二人は抱き合って号泣……なぜ!?

「大芝居で演じられるバカには感情移入できない」ことを思い知らされた映画であるが、女優たちの華麗な立ち振る舞いは「五社美学」ならでは。対立するヤクザの狂犬のような妻を演じる夏木マリは、鬼政相手に堂々と渡り合い、全裸で「落とし前」をつけようとする。妾の中村晃子も後妻となる佳那晃子もはじけた演技で異常な設定を際立たせ、おしげもなく肌をさらす。

 少なくとも言えるのは、こんな日本映画はもう作られないだろう、ということだ。

 映画の終盤で仲代達也は予言的なセリフを吐く。

「花火じゃ。上がった、上がった。パッと開いて、パッと散る。まっこと花火は威勢のええ男の生涯そのものじゃのう」

 映画もそうだった。この頃まではまだ。

 前年の東映の大作『青春の門』も象徴的である。

(つづく)

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コメント

原稿なら名前は間違えないように。
仲代達矢だよ

投稿: ピース | 2009年9月 7日 (月) 09時58分

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