嗚呼、素晴しき哉、オークス!
本当に素晴しいレースだったと思いませんか。ここ5年のオークスでは間違いなくベストレース。
で、ラップタイムを調べてみると……ああ、やっぱり。
毎年、刻まれてきた13秒台のラップが、忽然と消えている!!
ものすごく厳しい流れのレースだったということだ。緩みはどこにもない。
そんな流れをハロースピードと松岡騎手は2番手で進めた。
この位置取りは間違っていたか?
わしはそうは思わない。この馬にとって4コーナー過ぎからはまるっきりの未知の領域。トワイライトゾーン。
突き抜けろ、松岡ぁー!
わしの絶叫が聞き届けられたら、それこそ「血の魔術」であり、人間の技術の勝利であり、競馬の悦楽そのものである。サニーブライアンのように。マヤノトップガンのように。
しかし、何度も起こらないからこそ「魔術」は「魔術」であり、馬券はハズレだが、ストレスは微塵もない。
ベッラレイアの末脚は祖父サッカーボーイのように「夢のよう」だったじゃないか。
さらにその外に「血の花火」が立て続けに炸裂する。
父コジーン、母父セクレタリアトという純アメリカン血統、インディーカーのような外車ローブデコルテが、オース(本場のダービー馬ですぜ)の仔、ラブカーナを引き連れて伸びてくる。
騎手の怒号が飛び交い、馬体がぶつかり、互いの筋肉の力学が相互作用を重ねる2400メートルを走ってのハナ差。
気性難からサンデーサイレンスを日本に売っぱらったオーナーは本国で非難を浴びたが、正解だったことがこれで証明された。
8年ぶり、当たり馬券にSS系がいないオークス。
出ムチをくれて、ガソリンが切れるまでスピードのみを競い合うアメリカの競馬では、種牡馬サンデーサイレンスの成功はなかったはず。
サンデーサイレンスは、滑走路のようにスピードの出る芝なのに、一度ペースを落ち着かせて、安全できれいな隊列を組み、直線をむいてから「正々堂々、いざじんじょうに」瞬発力勝負する――サンデーサイレンスはそんな日本競馬だからこそ、黄金時代を築けたのではないか。
そして、後藤騎手、長谷川騎手、秋山騎手、松岡騎手などの蜂起により、平和と繁栄に溺れる王宮にも革命の火の手が近づきつつある……なんつて。
とにもかくにも素晴しいレース。思い浮かんだのは、オグリキャップが2着したジャパンカップだった。わしのベストレースね。
競走馬は死から逃げ、同時に死に向かって走る。(吉冨隆安)
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