「法人」が人であるなら

ザ・コーポレーション 著者：ジョエル・ベイカン 販売元：早川書房 Amazon.co.jpで詳細を確認する

　アマゾンは何をやっているのかな。ツタヤには５本ほどＤＶＤがあったが、アフィリにＤＶＤの画像が入っていない。アマゾンにとっても都合が悪い映画だからか。

　映画版も面白かった。

　この映画のミソは、「法人」をカウンセリングするくだりである。２０世紀、人間は企業を「法人」とした。人間と同じ権利を認め、人間社会に「法人」を紛れ込ませたのである。その結果が映画では列挙される。「法人」は他人に対して思いやりがないし、人間とは人間関係を維持できないし、法治国家で法律を守らないし、違反しても反省しないし、そもそもその活動は持続可能ではないし……その他いろいろ。

　不満もある。映画にマイケル・ムーアとナオミ・クラインを登場させてしまったことだ。自分から「これはあっち側の映画です」と宣言しているようなもんだ。経営者にだけ語らせればいい、と思うぞ。

　企業活動が悪だって？　それは、ムーアとかいうデブをはじめとする、現実感のない共産主義者が言っていることだろ？

　この映画は、そう断罪されて終わり、となる運命なんだろうな。現実に「ムーア対ブッシュ」はムーアのバカ負けだった。

　映像の並べ方も、『アトミック・カフェ』からマイケル・ムーアへ、という路線をただ踏襲しただけ。ライブ感のないムーア作品ってな趣だ。

　それにしても、最も激しい資本主義の変化を体験している我が国にこんな作品がひとつもない、ってことこそ異常事態だろう。

「儲けることはいけないことですか？」ってギョロ目をむかれて、「ダメだ」って断言する人が誰もいない。

　誰か、私といっしょにミヤウチヨシヒコさんの映画を作りませんか？